はじめに 我々の文化生活は、各種各様の金属材料を使用して成り立っています。金属が腐食し、さびて、老朽化するのは必然的なことです。
架橋、、道路などの社会資本の劣化、自動車、電車、船舶などの交通機関、発電、工業生産設備などの腐食対策にGDPの約3%が使われていると言われてれています。このように、腐食・防食は社会生活のうえで、非常に重要な課題です。 鉄が水と接することにより、腐食が起こり、さびが生じます。この現象は鉄に限ったことでなく、ほとんどの金属に見られます。本書では、まず、各種金属材料について、腐食、さびの特色、防食対策、金属材料の最近の進歩をとりあげています。 つぎに、金属材料のうち最も量的に多く使用されている、鉄を中心として、環境と腐食の関係を理屈も踏まえて分かりやすく説明するように努めました。 各項目は話題性に富んだテーマを選んでおり、さび及び腐食の現象を完結型にまとめています。これを読むことで、金属に現れる腐食の各種形態、理屈、環境とのかかわりを自然に理解していただけると思います。 単なる現象論の紹介ではなく、背景にある理屈を理解していただけると思います。 具体的に、鉄の腐食を促進し、あるいは、抑制するさびの働きをわかりやすく説明しています。さびに生成に機構を理解し、さびに防食性を利用することが、機器・構造物に安全性、経済性ならびに地球環境の観点で大切です。本書は、きっと読者の従来のさびに関する概念を一変することでしょう。さびを理解し、さびを制御、利用することが今後ますます経済的ならびに工業的に大切なことを分かっていただけることを期待しています。
2010年4月 著者を代表して 長野博夫 |